CVR2倍に スペシャルティチョコレートのMinimalが実践するセールスとブランディングの両立
プロジェクトメンバー
- 清水健史(free web hope.inc)Writer
「チョコレートを新しくする」をミッションに掲げ、D2Cブランド「Minimal - Bean to Bar Chocolate -(ミニマル)」を展開する株式会社βace。同社はコロナ禍において大きく販売戦略を変更し、EC売上400%増を実現しました。free web hopeはその一環として、2020年に新商品として登場した「チョコレートレアチーズケーキ」のランディングページ制作を担当しました。
本プロジェクトを担当した株式会社βace取締役COO緒方恵様、ECチームリーダー兒嶋仁視様、ランディングページのディレクションとコピーライティングを担当したfree web hopeの吉岡沙織が取り組みを振り返りました。
抱えていた問題
・コロナの影響で対面販売からオンラインへの移行が必要に
・新規顧客の獲得が課題ではあるが、既存顧客の期待値は下げたくない
・オンライン上での製品の魅力の伝達に苦戦
free web hopeが行ったこと
・ブランディングとセールスが両立するランディングページ制作
・Minimalのブランド価値を理解したコピー開発とデザイン設計
・ユーザー視点でバランスの取れた設計
・フォトディレクション
得られた成果
・他LPに比べて、CVR2.1倍
・新旧顧客に魅力を効果的に伝え、ブランドイメージ強化
▲株式会社βace取締役COO緒方恵様(左)、ECチームリーダー兒嶋仁視様(右)、free web hopeクリエイティブディレクター吉岡沙織(中央)
新規顧客と既存顧客で伝えるコンテクストを分けたかった
ご相談当時の課題を教えてください
緒方様:話はコロナ禍に販売戦略を変えたところから始まります。Minimalは元々店舗での接客、体験を通して便益的価値と情緒的価値を同時にお客様に伝えることを主軸に成長してきたブランドです。しかしコロナによりお客様が店頭にお越しいただくのが難しい状況になり、オンライン販売を強化する方針を決めました。
新規顧客にアプローチしたかったのですが、板チョコレートは新規ユーザーに訴求するのはなかなか難しい商材だと思ったのです。板チョコレートの見た目は言ってしまえば黒い板です。ですので店頭で提供してきたMinimalの情緒的価値やシズる感をサイトの中で伝えるのは難しいと感じました。
兒嶋様:新規ユーザーが最初にMinimalと出会うのに相応しい商品を開発することにしました。4種ほど開発する中で2020年に「チョコレートレアチーズケーキ」が誕生したんです。
しかし商品サイトへの集客で広告運用をしても、まったくコンバージョンが獲れませんでした。原因は商品サイトが便益的価値を中心に訴求していたからです。
店頭で情緒的価値を体験できた既存顧客にはそれで良いのですが、店舗を訪れていない新規ユーザーに情緒的価値のコンテクスト(文脈)をどこで伝えるかが置き去りになっていたのです。
緒方様:新規ユーザーは便益的価値と情緒的価値の双方が伝わらなければ購入に至りません。ただ、ECサイトの商品詳細ページで便益的価値と情緒的価値のすべてのコンテクストを伝えようとすると、既存顧客にとっては情報過多になり、離脱が起きてしまいます。
新規ユーザーと既存ユーザーの、コミュニケーションの導線を分けて整理することにしました。既存ユーザーは商品サイトへ、新規ユーザーは別の導線で店舗での体験と同じ情報をお伝えし、コンバージョンしてもらう。そこでランディングページ制作の必要性が出てきました。
free web hopeの知見、プロジェクトに取り組む姿勢に共感
free web hopeを選んでいただいた理由を教えてください
緒方様:free web hopeさんともう1社さんを紹介いただき、2社で検討していました。決め手になったのは、free web hopeさんが以前公開していたランディングページの制作過程から広告配信の結果のすべてを公開した記事(目標CV達成率140%超!サービスの認知度向上にも寄与した“筋フルエンサー”記事はどう作られた?)です。
「free web hopeさんの知見、プロジェクトに取り組む姿勢、どこにどう注力しているのか、クライアントとどういう関係性を築いているのか」が記事から読み取れました。すごくいい会社だな、と思ったんです。
吉岡:あの記事は、ヤラセなしのガチ企画なんですよ笑
緒方様:マーケティングの支援会社として取り組みを公開することは、「本当に意義があるな」と思いました。自信がないとできないことでもあるし、なかなかできることじゃないと思うんです。ノウハウを公開しても十分戦える自信があるんだろうな、と。
当社もオープンなカルチャーなので、そういう共通点にも共感したのかもしれません。まさにあの記事には、便益的価値と情緒的価値が備わっていたのではないかと。
吉岡:ありがとうございます。私はMinimalのいちユーザーでした。Minimalさんは明確なブランドの世界観をお持ちで、世界観を成立させるための定義が言語化され、デザインガイドラインも設定されていらっしゃいます。オリエンの前から、ブランドをランディングページ上でどう表現し、セールスに繋げるかの難易度が高そうなプロジェクトだと感じていました。
そして実は、緒方さんと一緒にお仕事をするのが以前からの目標だったんです。今回ご一緒させていただくことになって、嬉しさと緊張感と同時に「その時が来たな」と気合いが入りました。
セールスとブランディングの両立に必要な“Whyの深堀りとHowの拡張”
ランディングページの制作にはどのような要望が出ましたか
吉岡:要望をいただいたのは、セールスとブランディングの両立です。この2つを両立させながら「どう表現を成立させていくか、どのようにメッセージを出していくか」は制作に取り掛かる前に熟考しました。
緒方様:ブランドを毀損するような施策でPL(損益計算書)を上げても、BS(賃借対照表)が壊れてしまいます。「それでは意味がないよね」 ということをお伝えしました。LTVの話ですね。
兒嶋様:我々は短期・長期の2つの時間軸で施策を考えており、ランディングページは短期の施策の部類に入ります。ただその中で「どれだけモノづくりに魂を注いでいるのか、品質を高めるためにどんなことに取り組んでいるのか」などの、Minimalというブランドが持つ「骨太なストーリー」「思想」を盛り込むことは最初から決めていました。
新規ユーザーの中にはチョコレートレアチーズケーキのシズる写真だけでコンバージョンしていただく方もいます。ただそれは点の感動であって、ページの下部に「骨太なストーリー」「思想」があることで線の感動となって継続的な関係を築きたい、という想いがあります。
吉岡:セールスとブランディングを両立させたランディングページ作りでは、単に見た目をよくしたり新規顧客に対してどのように魅せるのかだけを考えればいいわけではありません。既存のMinimalさんのファンの方にも広告が配信されることを意識する必要があります。そのときに「私が知っているMinimalと違う…」となってはいけない。
ブランド毀損せずにというのは、既存のお客様が見た時にも「Minimalさんってweb上でもこだわっているんだな」「こんな食べ方や背景があったんだ」と思っていただかないといけません。
「Minimalさんの魅力ってなんだろう…」と考え、世界観や空気感を体験するために実際に店舗に行って、ハシゴして、ケーキをたらふく食べてみました。店内の雰囲気、店員さんの接客、食の香り、食感、後味を自ら味わってMinimalの「思想」を掴みにいきました。
新規層に対してコピーを書くときは、「伝わるコピー」つまり、分かりやすい言葉遣いにするのが正なのですが、そうするとMinimalさんの場合はブランドの人格がなんだかズレてしまいます。
一方で既存顧客を意識し、世界観を保つために既存のガイドラインに沿ってデザインの色使いをミニマムにしすぎると、ランディングページの各構成のコンテンツのテンションが同一化してしまい、のっぺりとした印象になり、シズル感や美味しさが伝わりづらいデザインになってしまいます。
本デザインはパートナーのアートディレクター西長正輝さん(Havvvna.inc)と一緒に取り組み、「美味しそう」と「こだわり」が常に見えるランディングページに仕上げました。
緒方様:セールスとブランディングの両立のために必要なのが“Whyの深堀りとHowの拡張”です。
Whyの深掘りとは我々が「チョコレートを新しくする」のミッション実現のために沖縄でカカオの栽培を開始したり、JICAと共同でニカラグアの農家にフィードバックセミナーを行っている「思想」の実現にあたるB/S活動のことです。Howの拡張とはWhatである商品の価値を高めるP/L活動の効率を高める施策のことで、今までにないシズる感ある商品写真を使ったランディングページを指します。このバランスが重要ですね。
兒嶋様:吉岡さんとの打ち合わせで、商品の切り口の意見を多くいただいて、商品価値が高まっていくのを感じました。特にワーディングは助けてもらいました。free web hopeさんとのミーティングは非常に勉強になったんです。我々が考え抜いているようで考え切れていなかった本質について問い掛けをしていただいたこともありました。
吉岡:ファーストビューのメインコピーは書いてはボツにしてを繰り返して、100パターンは書きました。その中から5パターンをご提案しました。
「お客様にいかにメッセージを届けるか」を考え、なるべくお客様と同じ目線、同じ気持ちや感情に近い状態で書いています。そのためコピーは夕方~夜に考えるようにしました。お客様が平日にレアチーズケーキを食べるとしたら、仕事が終わって自宅でご褒美感覚を味わいながら、というオケージョンだと思うんです。なので同じようにお取り寄せして、自宅でレアチーズケーキを食べながら考えましたね。
コピーが私個人の主観だけではいけないので、新規顧客に近い人たちの意見を聞いたり、アンケートを取ったりして、顧客の解像度を上げながらヒントを掴んだりもしました。
内々の話しですが、実は出す直前までアニメーションの調節をしていたんです。ストレスの無い挙動になるように、最適な表示の位置やタイミングを最後まで調整しました。弊社のデザイナーもコーダーも納品するまで一緒にこだわってくれて嬉しかったですね笑
プロにしか表現できないLPにテンションが上がりました
提案されたランディングページをご覧になっていかがでしたか
緒方様:テンション上がりましたね笑
新規顧客の気持ちを捉えた内容にしていただきましたし、既存ユーザーが見ても嫌な気持ちにならない、むしろ再発見もあるので、これは離脱されないだろうと思えました。
兒嶋様:私たちでは絶対に表現できないクリエイティブを出してくださったという印象ですね。最初に拝見したときは、もうなんだか嬉しかったですね。やっぱりプロにお願いしないとダメだな、と感じました。
吉岡:デザインは全体的にシンプルなイメージとしていますが、余白感やレイアウトは単調にならないように遊び心を入れつつ、コピーがしっかりと目に入るように意識しています。コンテンツ内容とともにページデザインもアニメーションも、Minimalの「こだわり」として感じてもらえるようにしました。
セールスの側面を象徴したようなコンテンツの1つにレアチーズケーキの断面図があります。食品の訴求ではありがちな既視感のあるコンテンツですが、既視感があるということはひと目で分かりやすいということでもあります。こうした“いかにも”なパートをどうバランスを取るかがポイントでした。アートディレクターの西長さんが美しく仕上げていただいたので助かりました。
具体と抽象のバランスが取れていたから、見た目もよし、獲得もよしなページが出来上がったと思います。
▲LPに挿入されたレアチーズケーキの断面図
プロジェクト当初から、こうしたデザインや表現の目線合わせをするミーティングを行えたことも成功の大きな要因の1つです。
「シンプル」なデザインといっても、人によって想像するものが異なります。事前に相手の視座を知ることで的外れな提案はなくなり、不要なコミニケーションを避けることができます。その分、アウトプットに対して「より良くするためには」の議論がチーム内でできる、と考えています。
CVR2.1倍に。期待値と実感値が両立できた成功事例
定量的な効果はどうだったでしょうか
兒嶋様:今回のランディングページは他のページよりもCVRが2.1倍の効果がでています。しかも広告からの流入数がかなり多い中での数字です。有意性がきちんと証明されたので、別の商品のランディングページも追加で制作をお願いすることにしました。
吉岡:緒方さん兒嶋さんがいてこその仕上がりなので、自分たちが作ったというよりは、今回携わったメンバーを含めて成果が出たと思っています。
ランディングページで使用する写真はこちらから具体的にリクエストさせていただき、Minimal様に新規で写真を撮影していただきました。オリエン時も提出した時も、建設的な議論やご意見をいただけて大変嬉しく思っております。
兒嶋様:ランディングページ内の写真は試行錯誤しました。Minimalの商品サイトでは今まで画角にヒトを入れることはありませんでした。あくまで商品がメインという考えなので。
ただ今回は誰かと一緒に食べるシーンや贈り物として活用するオケージョンをわかりやすく伝えようとしました。チョコレートレアチーズケーキにフォークをスッと入れる瞬間や食べる瞬間など、動きのあるシズる写真は何回も撮影し直しましたよ。今回を機に写真などのイメージのガイドラインも改めました。ガイドラインと言えど常にPDCAを回しています。
▲オケージョンやシズる感ある画像を取り入れた今回のLP
Minimalのようにセールスとブランディングを両立させるにはどうすれば良いでしょうか。
吉岡:制作観点でいうと、ランディングページの守破離を心がけること。ブランドを形成するものが何かを整理しながらストーリーを設計しつつ、見終わったときに「対象者」がどんな気持ちになるのが正解なのかを考えることではないでしょうか。
ランディングページである以上「購入(セールス)」されないといけません。今回の場合はその先の「継続」までを視野に入れていたこともあり、「誰が評価するのか」そして「どんな価値」を提供したら「五感」を刺激するのかを考えるとブランディングと両立ができると思います。
緒方様:セールスとブランディングの両立の答えは割と明白だなと思っています。セールスを重要視するのであれば期待値を上げる、ブランディングを重要視するのであれば実感値を上げる、です。
セールスを重視して期待値を上げたときにブランティングが犠牲になるのは、上げた期待値と商品体験の差分です。反対にモノさえよければセールスに注力する、はある意味間違ってはいません。高い実感値があるのであれば個人的にはどれだけ煽っても良いのではないかと考えます。
ただ、期待値と実感値を正しく構造化しようと思うと基本的には煽りをしなくなるのでCTR(クリック率)が低くなりがちです。このバランスをどのように取るかが言うは易しで難しい話題です。ブランディングを重視している我々でも、もっと煽りの文言を入れた方が良いかどうかの議論や調整はしています。今回の取り組みでは期待値と実感値の両立ができたので、私たちは成功と定義しています。
吉岡:ありがとうございます。おっしゃるように、ランディングページはときに「ゴリゴリ系」と言われる煽った表現のものもあります。ネット広告の実態としてはそういったLPが獲得できるケースもあることはここにいるメンバーは誰もが理解しています。しかしそれをしなかったのは、既存の顧客を想ってのバランス感覚ですね。
指示されたものを制作するわけではない それが期待を超えていた
兒嶋様:今回、定量定性で成果が出たのは、私たちだけでは出なかった切り口や、デザイン、ワーディングを提案いただいたおかけです。またディスカッションする中で私たちがハッとする部分や思考が広がる感覚もあり、有意義なものでした。
緒方様:クライアントが制作して欲しいものをその指示通りに制作したほうが楽だと思うんです。ただ、free web hopeさんはそれを是としていない。だから、敢えて私たちの視野が広がるような様々な話をしてくださったと思います。成果とともに学びをいただいた点は、free web hopeさんのミッション「期待を超える」をまさに具現していたと思います。
お問い合わせはこちら
ランディングページ制作やデジタルマーケティングでお困りの方はこちらからお問い合わせください。
まずは打ち手をご提案させて頂きます。
ご入力いただきましたメールアドレス宛てに自動配信メールが届いておりますのでご確認下さいませ。
2~3営業日内に、担当よりメールにてご連絡を差し上げます。しばらくお待ちくださいますよう宜しくお願い致します。